身近な相続・遺言相談室 第2回「相続で揉めたり、相続人が複雑になる理由」
よく「相続で揉めるほど遺産はないので心配ない。」とおっしゃる方がいますが、揉める理由の多くは遺産が多い少ないではなく、相続分が公平か不公平かということなのです。
例えば親と同居したり、近くに住んでいてずっと介護してきたのに相続分が同じなのはおかしいとか、生前に高額な学費や住宅資金などを出してもらったり、多額の贈与を受けたりした相続人がいる場合は、他の相続人との間に不公平感が生じるでしょう。
それと相続問題でもう一つ多いのが、相続人が複雑になってしまうケースです。
父親が亡くなって父名義の不動産を相続しようと思ったら、なんと祖父や曾祖父の名義のままだった。そうすると相続人はめったに会うことがない叔父さん叔母さんや、それこそ話したこともない甥姪など数十人になってしまった。ということが多々あります。
私のお客様で最も多い相続人数はなんと41人でした。こうなると相続手続きを終えるのに数年かかり、費用もばかになりません。
さらには相続手続き中にその相続人の一人が亡くなってしまうという事態もあります。
その場合、その亡くなった方の相続人が新たに関係してくるのでますます複雑になります。
また、父が再婚で異母兄弟がいたり、あるいは幼いころ養子に行った兄弟がいて連絡先がわからない場合などは、相続手続きを進めることができません。
不動産は名義を変えられなくとも住むことはできますが、故人の預貯金は凍結されたままになってしまいます。
そこで自分の相続人の間でこういうことが予測される方はぜひ遺言書を残してください。次回はこの遺言書の有無が相続手続きにどう影響するのかについて述べます。
身近な相続・遺言相談室 代表相続法務指導員 川島幸雄